マロン脱走

日中はほとんどハリハウスの中で寝ているマロンだが、たまにやたら活動的になることがある。今日は朝から元気にスリッパで遊び、なかなかハリハウスに入らなかった。運動不足気味だしちょうどいいや…とスリッパと戯れるマロンを眺めていたのだが、30分くらいするとハリハウスの方へ入ってごそごそと寝る準備を始めた。このまま寝るだろうと思い、2階へ仕事道具を取りに行き、戻ってくるとマロンがいない。一瞬の隙をついてバリケードを突破し脱走してしまったようだ。

とりあえずマロンが潜り込みそうなところをかたっぱしから覗き込んでみる。写真だなの隙間、コーヒー棚の隙間、電話台の下、ベンチの下、ピアノの裏…。どこにもいない。さすがに焦ってきたが「落ち着いてマロンの気を感じるんだ!」と自分に言い聞かせじっと耳をすましていると、食器棚の後ろからたわしをこするような音がする。

覗き込むと、そこに奴はいた。一番入って欲しくなかった食器棚の裏に入り込んでいた。動かせないし、手も入らない。ここにだけは入り込まないようにと細心の注意を払っていたのだが、今日に限って隙間を塞いでいなかった。あらゆる事故は「今日に限ってやってなかった」という不注意から生まれるものだなとふと思った。

マロン的には念願の探検エリアだ。「狭くて長い素敵なトンネル見つけたぜ!」と喜んでいるのか、楽しそうにふんふんと鼻を鳴らし行ったりきたりしている。お風呂に入れたばかりなのに、お腹で床の綿ぼこりをかき集めている。まるで小型ルンバだ。

捕まえるためには、私の手が届く所にまでマロンをおびき出さなければならない。マロンは穴や隙間に入りこんだ後、必ず出口を確認する癖があるので、とりあえず片側の隙間を塞いで様子を見る。すると予想通り、塞いでない方の隙間の方へとトコトコ歩いてきた。あとちょっとで手が届く…と思ったところで私の気配を感じたのか、くるりと踵を返して奥の方へ戻ってしまった。

かくなる上は、「ダーウィンが来た!」で見たハリネズミの習性を参考に考えた「ライバル登場!作戦」を遂行するしかない。ヨーロッパの野生のハリネズミは巣穴を巡ってよく争いをするそうだ。自分の巣穴に入ってこようとするライバルに対しては、体当たりして追い出そうとする。その習性を使ってマロンを隙間の外までおびき出すのだ。

手始めに、マロンの頭のある方の隙間から夫が愛用しているクッションを突っ込んでみる。なぜ、夫愛用のクッションかというと、我が家の中で夫にだけは慣れていないためだ。(私や娘の匂いには慣れているため警戒しない。)予想通り、「フッフッフッ…!」と威嚇を始めるマロン。さらに突っ込んでマロンの頭をツンツンしてみると、「シュー!シュー!シュー!」と湯沸かしのような音を立てて怒りのハリハリアタック。「戦い挑んできたけど威嚇され弱気になってきたライバル」を装うように、後退&ツンツンを繰り返しちょっとずつ出口の方へおびき寄せ…マロンが隙間から体を出してアタックして来たところを捕獲。作戦成功だ。30分ほどかかったが、なんとか無事に捕まえることができて一安心。

マロンの方はというと、ちぇ、なんだよ…という感じにお気に入りのスリッパに頭を突っ込んでふて寝を始めた。一瞬の不注意が思わぬ事態を招くことがあるのだなと反省した午前中だった。

本日の脱走犯。

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